(探索29日目日記)
――人間の頃・・・遠い昔の記憶だ
私は緑に囲まれた小さな村に住んでいた。
取り立てて何かある という訳ではなかったが・・・
とてものどかで、平和 という言葉が似合いすぎるようなところだった。
私は父と母、そして白い猫と3人と1匹で暮らしていた。
両親は村で医者のような存在だった。
医者のような というのは、今ほど医療技術が発達していた訳ではなかったので応急処置程度だったからだ。
それでも村の者からは感謝され、とても慕われていた。
私もそんな両親を尊敬していたし、誇りに思っていた。
・・・実のところ、両親とは血がつながっていなかった。
村の側の森で捨てられていた赤子の私を見つけ、ずっと我が子のように育てていたのだと聞かされたのは10歳の誕生日だった。
その時はあまりにいきなりなことで少しためらったのを覚えているが・・・
それでも私は・・・本当の両親が恋しいとは思わなかった。
今まで一緒に暮らし、私を愛して育ててくれた両親こそが、父と母、それで充分幸せだったから。
今も首に付けているこのチョーカーはもともと私が持っていたもの らしい。
ずっと持っていてはどこか父と母をを悲しませるのではないかと1度は捨てようとしたのだが止められた。
その後はずっと首に付けている。1000年以上たった今も。
私の唯一の手がかり、そして、人間の頃の思い出・・・
PR